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新居拓也のブログ。2016年夏、カナダのユーコン川を下ってきました。前職は地方紙記者。元川の学校スタッフ。


by n11t

亀尾島川と長良川DAY

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長良川水系の亀尾島川は奥深い森の中にある。
川へ通じる峠を越えると、周囲は家や田畑が消えて森と道路だけになった。

谷に近づくと、道路の大きな曲がり角に
「ご迷惑をおかけします ダムをつくっています」
と書いた看板があった。

ダム建設中の川にそのような看板があるのは当然だが、何だか数十年前の世界に迷い込んだような感覚で、かすかにめまいがした。
大型公共事業が次々と進められた時代が終わり、ダムという仕組み自体に大きな疑問が投げかけれるようになった今、新規のダム建設の現場に出会うことは稀だ。
ダムは内ヶ谷ダムという。

川沿いを下流方向へ少し進んだところでゲートがあり、一般車両は入れなくなった。
ダンプカーがしきりに出入りしていた。

亀尾島川に向かったのは、四国吉野川「川の学校」のスタッフや卒業生、その保護者ら約10人。
毎年9月、保護者の一人、名古屋在住のなおさんが幹事となって吉野川メンバーを集め、岐阜県で開かれる「長良川DAY」に参加している。
長良川DAYは「開け!河口堰」を掲げる川遊びイベント。
僕も今年で4回目の参加だった。
そこに前日入りしたメンバーで「ダムに沈む川を見てこよう」と亀尾島川へ向かったのだ。

僕たちはゲートより先に進むのを諦め、すこし上流にあった淵で潜ることにした。
標高は確認しなかったが、ダムによって沈む場所ではないかと思う。

シュノーケルをつけて泳ぎだすと、10センチ少しのアマゴがあちこちで泳いでいるのがわかった。
陸上から淵を見ても、流れの渦の中でアマゴが漂っているのが見える。
近くで人が泳いでいるというのに、数メートル離れた場所ではライズしている。

岩の谷間を見ると、20センチのアメゴが身を潜めていた。
アユと違ってアメゴは動きがあまり速くない。
異変を感じても逃げるより、岩陰に身をひそめてやり過ごそうとするようだ。
手を伸ばすと、僕の体に体当たりして逃げていった。
  
後日、内ヶ谷ダムについて調べていると、カヤック用品の通販でお世話になっている岐阜のアウトドアショップ・スピリットさんのホームページに記事を見つけた。こちらのページ
 
スピリットさんは「賛否両論あるのはもちろんの事として、長良川流域の住民や釣りや川遊びに長良川を訪れる方のうち、このダム工事が始まった事自体を知る人がどれぐらいいるのでしょうか?」と書いている。
確かにインターネット上でも内ヶ谷ダムの情報は少ないし、建設現場は林業関係者や釣り人、そして工事関係者くらいしか訪れないような場所なのだ。
看板に書いていた「ご迷惑をおかけします」とは誰に言っているのだろうか。
アマゴに対して?



長良川水系で遊んだ3日間に撮影した動画はYoutubeにアップした。
亀尾島川の映像は前半。
カメラが超広角のGOPROなのでズームが出来なかったが、最初の水中映像で下の方にアメゴが何匹も泳いでいるのが写っている。
とても小さいのですが、分かりますでしょうか。

動画の後半で講演しているのが川の学校6期スタッフのけんぼうだ。
彼は現在本職の川漁師となり、アユ漁で生計を立てている。
川によって味が変わり、時期によって値段が変わるアユの面白さや、漁で使う網についてのマニアックな説明をとてもわかりやすくしてくれた。
どんな質問にもよどみなく答える彼の口調からは、アユ漁への本気さや、あと
「やっぱこの人、本当に魚が好きなんだな」
っていうのが伝わってきました。

彼は和船を2艇所有していて、長良川で川遊びのツアーも行っています。
自然、生き物、川文化の最高の案内人だと僕は思っているので、興味がある方は是非参加してみてください!結の舟

 
# by n11t | 2016-09-07 13:47 | 川遊び


「寒い…。」
7月22日。
ユーコン川は午後7時でも周囲はまだ明るかった。
ただ大粒の雨が体を打ち続けていた。
カヌーを漕げば雨具の袖口から水が流れ込んでくる。
フードのコードを絞っても首まわりからは水が染み込む。
 
さっき立ち寄ったキャンプ地で停滞した方がよかっただろうか。
そこではイギリス人家族が先にテントを張っていて火を焚いていた。
リチャードと名乗る父親が「自由にしていっていいよ」と声をかけてくれた。

ただ、あと2時間も進めばカーマックスだ。
平らなキャンプ場やシャワー、そして何よりハンバーガーショップあるはずだった。
あと少しだと思うと進まずにはいられなかった。

とにかく川を漂うだけでも少しは進んで行くはず。
そう思って僕はカヌーに乗り、雨の中で舟の上で体を丸めて小さくなっていた。
カヌーには雨水がたまるので、時折くみ出した。
 
北アメリカ北西部の位置するユーコン川。
日本では作家の野田知佑さんが多数の旅行記を発表してその名が知られた。
僕は中学3年の時、その野田さんが校長を務める四国吉野川の「川の学校」に参加した。
小学生の参加者が多い川の学校で数少ない中学3年生だった。
そんなこともあってか野田さんと話をする機会が多く、野田さんも僕のことを気に入ってくれたようだった。
大学に入るとスタッフになり、計8年間運営に携わった。
川の学校卒業生としてユーコンは一度は下っておかなければ。
ユーコン川は僕にとって「いつか訪れなければならない川」になっていた。

29歳。
僕はスタックしかけていた。
仕事に不満があったわけではない。
しかし、毎日は少しづつ違えど、何か劇的なことが起こるわけでもない。
ファイトクラブでブラッドピッドが言っていた。
「長いはずだった人生も、いつかは持ち時間がゼロになる」。
そろそろ僕は次の段階に進む時だと思った。

会社を退職するにあたって、今までやりたくてもできなかったことを整理し、まず浮かびあがったのがユーコン川を下ることだった。
圧倒的な荒野の中に打ちひしがれたいと思った。

そんな風に軽く考えていたのだが、実際、僕はユーコンの雨に打ちひしがれていた。
 
午後8時30分、ハンバーガーまであと少し。
強かった雨は弱くなり、ついに降り止んだ。
雲に隠れた太陽が周囲を少しだけ黄色く照らし、浅瀬では魚が跳ねる音がした。
ルアーを投げてみると、2投目で魚が食いついた。
60センチほどのシーフィッシュだった。
ルアーはカナダ国旗が描かれたスプーンで、何かの冗談かと思った。

旅が終わって振り返ると、ユーコンではほぼ毎日雨が降った。
大体は本格的な雨で、道中、地元の人は”Unuseual”だとか”It has never rained like this before” などと口を揃えた。
ユーコン川を下った13日間のうち、一滴も雨が降らなかったのは2日だけだった。
# by n11t | 2016-08-29 11:05 | ユーコン川

ミャンマー旅行



6月、ミャンマーに行ってきた。
同国には高校時代、ニュージーランドにに留学していた時の友人である淳一君が仕事をしている。彼が日本に一時帰国している際に東京で飲んだ際、「遊びに行くよ」と約束したのだった。

ヤンゴンは雨が降っていた。到着ロビーに入った瞬間、湿気が体を包んだ。最近まで軍事政権が続いていたこともあってか、大都市であるヤンゴンにも西洋文化の気配が少なかった。ほとんどの男性はズボン履かずに民族衣装のスカート・ロンジーを履いている。足元はみんなサンダルだ。淳一君によると「このあいだ初めてケンタッキーフライドチキンができて街に衝撃が走った。これまでタイなんかに旅行に行った人がお土産で買ってきていた」という。

数日間ヤンゴンで過ごした後、バガンへ列車で移動。窓から外を眺めていると、雑多な住宅が並ぶ都会の風景が、田畑や質素な家が並ぶ農村地帯の風景に変わった。家屋は竹などで作ったシンプルなもので、牛が適当な場所で草を食み、豚が泥をかぶり、犬が呑気に散歩している。ぼうっと列車を眺めている家族がいれば、畑でサッカーをしている子ども達もいる。ミャンマーの印象は「貧困」ではなく「原始に近い」という表現がしっくり来る。


列車のシートは二人掛けで、線路は「旧日本軍が作ったもの」と言われる。老朽化も進んでいて、縦揺れ、横揺れが激しい。ただ、600円なので文句は言えない。列車で前の席に座っていたのは23歳のイスラエル人で、3年の兵役を終えて旅に出ていると言った。期間は「金がなくなるまで」らしい。


スリムだがどことなく抜けている印象があり元軍人っぽくない。しかし兵役中には何度も危険な目にあったという。その国の背景は薄々知っていながら、あえて「誰と戦っていたのか」と聞いてみた。彼は「テロリストだ」と言う。「あいつらはミサイルで攻撃してくるんだ」。兵役中は仲間も死なず、人を殺さずに済んだ。「と思う」。

「ビルの建物を3回銃撃したんだ。中に人がいたかどうかは、わからないね」。


朝になると雨雲はなくなっていて、大地は砂漠に近づいていた。バガンには半日くらいで着くかと思ったが、結局予想を大きく上回って17時間かかった。


# by n11t | 2016-07-05 00:00 | 海外

無題

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# by n11t | 2014-04-06 22:31 | 写真
10年間で200兆円の公共投資をするとする法案を提出している自民党。
その経済効果云々についてはわからないし、必要な公共事業は数多くあると思うけれど、事業の絶対数が増えると、不要な公共事業が発生するリスクも、必ず高まる。
そうなった場合に犠牲になりやすいのが、気づかれにくいところにある自然。
過去に三面張りの痛々しい姿になった川を見てほしい。

だから僕たちはこれまで以上に自然の変化をウォッチしないといけないし、気を引き締めないといけないと思う。
自然で遊ぶ僕たちだから、見える部分があって、見逃しては行けない部分がある。
# by n11t | 2012-12-17 03:47