【ユーコン:ホワイトホース〜ドーソン】サケ、イクラ、サケ!(7月26日)
2016年 12月 16日
寝ている間にクマの襲撃はなく、クレイのライフルが火を吹くこともなかった。
太陽の光が差す、久々の朝だった。
前日から醤油に漬け込んでいたイクラをつまんでみた。分量は適当だったが、日本でもおなじみのイクラの醤油漬けになっていた。安田さんが炊いた米をいただいて、イクラご飯。至福だった。
連絡先を交換し、クレイ、僕、安田さんの順に出発。ユーコンの水はすっかり茶色になり、幅が広くなり、中洲が増えた。一言に「ユーコン」と言っても、レイクラバージュ直後の区間「30 Mile River」とここでは全く様相が異なる。
右岸にクロクマがいた。近寄るがしばらくこちらに気づかず、茂みに頭を入れてごぞごぞとやっている。カヌーの存在に気づくと、森に駆け込んで行った。
中洲に上陸して昼食。見晴らしがいいので、熊に出くわす心配がない。メニューはサーモンいくらパスタ。パスタは茹でておき、サーモンを多めのバターでソテーにする。皮がカリッとしたら身をほぐし、パスタと醤油で和え、イクラをたっぷり乗せて完成。贅沢はパスタだが、イクラとサケは大量にあった。おいしいものしか入れてないので、美味しいのは当然!
午後になって、また雲行きが怪しくなってきた。近くの道路とユーコン川が近接する地点ミントの付近で、まとまった雨にぶつかってしまった。雨がかなり大粒だった。座ったままじっとして数時間やり過ごす。
雨が上がり陽の光が差した。ミントから少し先のTHOM’S LOCATIONという場所で安田さんが上陸しているのを見つけた。
「いやあ、もうびしょ濡れです。タクラマカン砂漠よりキツい。脱出ボタンがあったら、押すとこでした」と言う。
そこには古いけれどしっかりした作りのキャビンがあった。中には薪ストーブもあり、粗末な2段ベッドが2つ。「キャビンに泊まるのが夢だったんです」と安田さん。僕もそこで泊まることにした。薪ストーブをガンガンと炊き、濡れた道具を乾かす。
焚き火を起こし、晩ご飯にサーモンのシチューを作る。小麦粉、バター、牛乳を持っていたのでなんとか作れるのではないかと思ったのだ。あとマッシュルームも。準備していたわけではないが、カーマックスで買った材料はほぼシチューのそれであった。
バターと小麦粉を炒め、牛乳を少しずつ加えていくホワイトソース作りは、幼い頃にやった覚えがあった。それを焚き火でやる。分量は適当。だけれどシチューは完全に自分の想像通り出来上がった。
シチューを安田さんに分け、代わりに今日もご飯をもらった。「米は山ほどありますから」
1本のビールと少しの焼酎を飲み、昨日燻したサケをつまんだ。
椅子に座って本を読んだ。本は「日本人のための憲法言論」。大学時代、神保哲生ゼミの友人が「先生が読めと言っていた」と勧めてくれた本だ。買ったもののずっと放置していたので、持ってきたのだった。
午後9時それでも周囲は夕方のようだった。