新居拓也のブログ。2016年夏、カナダのユーコン川を下ってきました。前職は地方紙記者。元川の学校スタッフ。


by n11t

【元川ガキ、ユーコンへ行く】ファイブフィンガーラピッズから楽しいキャンプ(7月25日その2)


フィッシュキャンプを出てしばらくすると、右岸に安田さんのカヌーが見えた。

あと少しで最大の難所とされるファイブフィンガー・ラピッドが訪れる。その急流は安田さんと一緒に下ることにした。


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この大河に急流が現れている理由は、この場所にはいくつもの大岩があり、その間に水流が圧縮されて流れているからだ。本当に5つに分かれているのかは確認していないが、確かに大河が5本の水流に分かれているような形だ。


経験者やいろいろな本の情報では「右端の水路の真ん中を行けば大丈夫」「急流というほどのものでもない」とされていたがやはり心配だった。日本ではホワイトウォーターと言われる激流も下っていた自分だが、今乗っているカナディアンカヌーには舟への水の侵入を防ぐスプレースカートがない。それにユーコンほどの大河だ。波のうねりがどのようになっているかもわからないし、万一バランスを崩したらあっという間にカヌーに水が入り込むのではないかと思った。


なんてことないところで沈してしまうのがカヌー・カヤックだ。ライフジャケットのベルトをぎゅっと閉めた。


先に安田さんが行った。急流を形成する岩の手前は淀みで右側が大きなエディになっていた。数十メートルはある大きく強い水流だ。ボイルと呼ばれる水底からの水流もボコボコと浮かび上がっていて緊張した。こういうところではバランスを崩しやすい。エディに入らないように中央を進んだ。


岩の真ん中を超えると波が現れ、カヌーが上下に揺れ始めた。ざばん、ざばんと波が定期的に船底を打つ程度の波だ。ただ一度だけ左斜め横の波が当たり、少しバランスを崩しかけた。とはいえそれも沈とは程遠い、なんてことない波なのだが、やはりカヌーに自分の命を託す全ての道具が乗っていて、沈すれば全て流れていってしまうと思うと体が強ばった。そのまま無事通過。



またしばらく行くともう一つの難所とされるリンクラピッドがあるのだが、ここは川の幅広い部分で、中央には白波が立っているが右側を行けば急流ですらなかった。


夕方、地図に”Good Large Camping Area”と書かれていたユーコン・クロッシングに到着したが、腰までの雑草に覆われてキャンプどころではなさそうだった。地図の情報が現状とずれていることもある。


午後7時、MERRICE CREEKと呼ばれる場所で、リンクラピッド後に別れていた安田さんに再会した。「とてもいいキャンプ地ですよ」と言うので、僕もここに宿泊させてもらう。河原から小道を30メートルほど登ると、林の端が見晴らしのいい場所になっていた。


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木々の間にタープを張り荷物置き場に。川側にテントを張った。

奥には朽ち果てたキャビンがあった。屋根が残っているのでそこで雨風をしのぐこともできる。



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薪を拾いに林に入って行くと、長い小道が続いていた。熊もいるようで、小道沿いには足跡が続いていた。


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キャビンの入り口に焚き火跡があったので火を起こした。壊れかけだが屋根があるので、多少の雨なら大丈夫そうだ。いただいたサケでフィッシュキャンプの作業を再現してみた。身に1.5センチほどの感覚で切れ目を入れ、塩を降って焚き火の上に吊るした。数時間後、ややスモークされた切り身が出来上がった。たくさんいただいたが、これで数日は食べられそうだ。


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イクラには醤油を入れ、朝まで置くことにした。醤油を入れて少し食べてみたのだが、醤油とイクラの味がバラバラで美味しくなかったのだ。


夕食はカーマックスで買った冷凍ピザ。ホイルで包んで焚き火に入れると、綺麗に焼きあがった。サケは皮側から焼くのが一番美味しい方法だと、いただく際に聞いていた。皮がパリパリになるまで焼くと、サケの油が滲み出て美味しかった。


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遠くに黒い雲が見え、こちらに近づいているように見えた。「こっちに来られたら困りますねえ」と安田さんと話していると、白人の男性が現れた。カナダ人で名前はクレイという。一人乗りのポリ艇でやってきた。


彼はライフルを持っていた。弾丸は1センチ以上のもので、当たると2つに割れて大きなダメージを与えると言う。「今晩はクマが来ても安心だね」と僕と安田さん。


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焚き火を囲んで3人で話した。

クレイはかつてはアメリカ大統領選の選挙活動にも携わったインテリだが、現在は大工だと言う。「稼ぎがいいんだ」という。マッケンジーを下りだりたいと思っていて、その前哨戦のようなものらしい。


ポケットからもぞもぞと携帯電話を取り出し、「レイクラバージュの端で不意に電波が入ったよ」と言った。そういえば土産屋で売っていたTシャツにこんなものがあった。”FREE WiFi →”と書かれた看板の先にクマが待ち構えており、スマホを持った男性がふらふらと歩いていっている、というイラストが書かれていた。そういう時代よね。


もう1つ思い出した。レイクラバージュの端に怪我をした人がいて、病院に行くために水上飛行機を呼んでいた。人の多いキャンプ地だったから、誰かが携帯電話を持っていて、運よく電波が入ったのかもしれない。


「どんな怪我だったの?」

「目が腫れていたよ。偶然居合わせた医師が病院に行くことを勧めたんだって。どうして怪我したのかは聞かなかったけど」

「多分xxxxを目に入れたんじゃない?」

「ひでえ!」

それが政治科学で修士を取った男が言うジョークか!


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雲はちょうど目の前の対岸を通り過ぎ、キャンプ地は雨を免れた。遠くに大きな虹ができいた。

人と場所と天気と。最高のキャンプだった。


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by n11t | 2016-12-15 08:00 | ユーコン川