新居拓也のブログ。2016年夏、カナダのユーコン川を下ってきました。前職は地方紙記者。元川の学校スタッフ。


by n11t

【元川ガキ、ユーコンへ行く】カーマックス出発。フィッシュキャンプに寄る(7月25日その1)

荷物をまとめ、コールマインキャンプ場を出発。ここで旅を終えるデンマーク人のジョナスに別れを告げる。Have a good trip !

出発してすぐにユーコン川を渡る橋がある。昨日自転車でも通った橋だ。この旅でツーリングした距離は800キロだったが、その中で唯一くぐった橋だった。

しばらく進むと左岸にフィッシュキャンプが見えた。フィッシュキャンプとはカナダの先住民であるファーストネーションのサケ漁の基地。捕まえたサケを捌いたり、加工したりするための場所だ。

フィッシュキャンプはビッグサーモンリバーの合流点でも見つけていた。野田さんの本ではよくフィッシュキャンプに訪問してサケをもらう、といったシーンがよく出てくる。しかし、彼らは仕事をしているわけだし、それが生活の一部であるわけだし、そんな風に気軽に旅人が訪問してよいものかと僕は疑念を抱いていた。なのでビッグサーモンの合流点では前を通りがてら「こんちわ」とあいさつしただけで通り過ぎていたのだった。その時は無表情なファーストネーションが「やあ」と一言返してくれた。

フィッシュキャンプがどのようなものかは未だ興味があり、この日も観察がてらフィッシュキャンプの前を通ることにした。このキャンプは先日のものよりも大きく、10人弱が作業していた。川を流れるカヌーの上から「こんにちは」というと1人の男性が「調子はどうだい」と笑顔で言った。もしや、と思った。なんだかフレンドリーそうだし、このフィッシュキャンプは立ち寄れるのではないか。とっさに「止まって作業を見ていいい?」という言葉が口を出た。誰かが「いいよ」と言い、接岸したカヌーをファーストネーションの若者がロープで固定してくれた。


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「僕の名前はタクです。日本から来ました」とユーコン定番の挨拶。そして作業を見せてもらった。彼(彼女)らはV字型に組んだ板に腹を上にしてサケを乗せ、腹をさき、三枚に下ろす。その後、身に約1センチ間隔で切れ目を入れ、焚き火を炊いた屋根の下に吊るして乾燥させる。切れ目を入れるのは身の中まで燻して、虫が入らないようにするためだという。ここで「乾燥させたもの」「半乾燥」、そして特別な小屋で「スモーク」、そして別の屋根の下では犬たちのために骨周りを乾燥させていた。半乾燥のサーモンをフライパンで焼いたものに、塩をかけて食べさせてくれた。サケの旨味が凝縮され、しかも脂が乗っていて絶品だ。そういうと、1人がサケの頭を指差して言った。「皮と身の間を見てごらん。サケはベーリング海からここまで何千キロも旅するから、たくさんの脂を蓄えているんだ」

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彼らの中にはファーストネーションもおり、また白人もいる。「作業の写真を撮っていい?」と聞くと、痩せて長身の白人男性が「そうだな。5000ドルでいいよ」と冗談っぽく言った。「うーん、クレジットカードは使えるかな?」と荒野ボケで返すと、彼は「もちろんさ!僕の尻の間を通しな!」

後から知ったことだが、彼はファーストネーションの女性と結婚した男性だ。またキャンプについて詳しく説明してくれた女性は英国生まれのリサ。夫のジョンが先住民のためのコンサルタントをしている。

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リサが説明してくれた。「このサケは対岸に仕掛けた罠でとったの。昨夜から今朝まででこれだけ(数十匹)。網の設置場所は1945年からずっと変わってないらしいわ」。このフィッシュキャンプの代表は97歳のおばあちゃんだ。普段はあまり元気がないのに、この時期、フィッシュキャンプに来ると元気になるのだという。リーダーというより、精神的な支柱というのが正しいかもしれない。

またジョンがポツリと警告した。「どのフィッシュキャンプもこんなにフレンドリーってわけではないからね」

メスのサケはイクラを抱えていた。若いファーストネイションがイクラを少しずと川に放り投げると、寄ってきたグレイリングがそれに食いついていた。「日本人はこれが大好きなんだよ。そのせいでアラスカのサケを取りすぎたっていう話も聞いたけどね」。そんな話をしていると、彼らはジップロックにイクラを入れ、また「これぐらいだったら食えるか」と60センチほどのサケを切り身にして丸々渡してくれた。長身の男は「さっきの写真撮影と合わせると高えぞ」

1人が言った。昔、犬を連れた日本人がこのキャンプに来てね。イクラをあげるとその中に醤油を注いで食べていたよ」。犬を連れた日本人、おそらくそれは野田さんなのではないか。あえてその話はしなかったが、帰国後、野田さんにその話をすると、「カーマックスの少し下か。多分寄ったことがある」とのことだった。やはり野田さんはユーコンのパイオニアなのだ。

リサは旅が終わってホワートホースに来たらぜひうちに来て、と連絡先を教えてくれた。僕は焼酎を差し出し、「Japanese Ginです。よかったら飲んでください」と言ったが、冗談好きの長身の男は「君の旅にこれから必要だろう」と受け取ってくれなかった。
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by n11t | 2016-12-14 10:00 | ユーコン川