新居拓也のブログ。2016年夏、カナダのユーコン川を下ってきました。前職は地方紙記者。元川の学校スタッフ。


by n11t

【元川ガキ、ユーコンへ行く】USベンドで釣りをする(7月20日)

f0093462_11055468.jpg

朝までぐっすり眠れた。孤独にクマに耐えた前日とは違い、隣に人がいるのは心強かった。

起床て僕はフランスパンをかじった。ウルフガングとマリアンは小麦粉をこねてパンのようなものを作っていた。僕のメモでは「パトック」か「パメック」と書いてあるが、正しくはわかならい。作り方はこうだ。

【材料】3カップの小麦粉、塩少々、大きいスプーン2杯のベーキングパウダー、水2カップ
【作り方】材料を混ぜて、油かラードで焼く。

ウルフガングが僕に釣り糸の結び方を聞いてきた。今ままで適当にやっていたらしい。
「釣りはユーコンでしかしないんだ。オーストリアでは1時間待っても釣れないけど、ここに来たら一投ごとくらいのペースで釣れるものね」

f0093462_11060815.jpg

のんびり準備して出発。1時間ほど漕ぐと湖の端にたどり着いた。
これだけ大きな湖なのに、流れ出しは驚くほど小さい。

レイクラバージュで同じ景色に見飽きていた分、川が流れて、次々と変わる景色に心が躍った。太陽の光も差した。
f0093462_11070110.jpg

f0093462_11075202.jpg


f0093462_11063417.jpg
ウルフとマリアン

川岸にいたウルフとマリアンが「もう2匹釣ったよ!」と大声で叫んだ。
え、こんな場所でも釣れるの?。そこは2メートルほどの水深で、流れはあるが瀬や渦などの変化には乏しい場所なのだ。やはり魚影はとても濃いらしい。

午後の早い時間にキャンプ地に到着。USベンドを超えてすぐの場所で、中洲が小島になっている。ベンチと机があった。

少しして、ウルフとマリアンがやってきた。キャンプ地を観察し「ここでキャンプをしてもいいか」と聞いてきた。彼が許可を求めてきたのは、前日こんな会話をしていたからだ。
「タクはなんでユーコンに来たの?」
「うーん、そうだね。1人になって厳しい場所に身を置いて、いろいろ考えたかったかな」
だからウルフは気を使ったのだ。
「大丈夫だよ。1人になれる日なんて、これからいくらでもあるさ」

ここは野田さんが「ユーコンを筏で下る」の中で「魚がよく釣れるキャンプ地」として紹介していた場所だ。初めてのフライフィッシングを練習する場にはぴったりではないかと思った。

テントを設営して釣りへ。この小島では右側が水深が深い本流で、左側が浅い支流になっていた。僕は左側を選んだ。


f0093462_11080619.jpg
釣り場。グレイリングの撮影は忘れてしまった。


高校1年の時に映画リバーランズスルーイットを見て、こんなに美しい釣りがあるのかと思った。その”a river runs through it”(川がそこに流れている)というタイトルも「それ以上の意味は自分で考えて」と語りかられているようでよかった。僕はその後、川の学校で子どもにメッセージを書くとき、必ずその”a river runs through it”と書くようになった。

ずっとフライをやってみたかったが、普通の釣具屋で道具を扱っておらず、敷居が高くて踏み出せていなかった。今回、フライ好きの店長がいる「いはら釣具本店」で道具を揃えることができた。店長は駐車場でキャスティングまで教えてくれた。

ちなみに店長は、僕が「カナダに行くのでフライの道具を揃えたい」と聞いた時、「経験がないので対応できないと思います…」と言っていた。でっかいサーモンなどを釣るのかと思ったらしい。結局、「その後ニュージーランドにも行くので、ニジマスを釣るくらいのタックル」というのでそろえてもらった。すみません店長、カナダくんだりまでやって来て、釣るのはグレイリングというマイナー魚だったんです。

さて、実釣。まずはアメゴのエサ釣り感覚で瀬を流す。すぐにサーっと流れていってしまった。もう1投。あたりはない。
でもこの辺は予想通り。確か店長は「通常、フライは自分より下流側で釣る」と言っていた。ポイントは瀬が終わるあたりだろう。移動し、流れ切ったあたりを漂わせていると、ラインが走り出した。柔らかいロッドがぐにゃりと曲がり、指で押さえたラインがずずずと引き出される。リールのドラグに頼らない直接的なやりとり。これがフライの醍醐味か。30センチ弱の綺麗なグレイリングだった。

結局、ここでグレイリングを計3匹を釣った。
夕食はマリアンがカレーを作ってくれると言った。「昨日から食べさせてもらってばかりで申し訳ない。何か作るよ」と申し出ると、魚料理をリクエストされた。「日本人なんだから得意でしょ」

僕はレパートリーもそれほどないので、釣ったグレイリングを三枚におろし、塩胡椒と混ぜた小麦粉をまぶして油であげてフライにした。これに「日本人は何にでもこれをかけるんだ」と説明して醤油をかけて完成した。2人の感想は”Interesting”。「口に合わなかった?」と聞くと「良い”interesting”よ」最後まできれいに食べてくれた。

僕がたった1品のフィッシュフライを作る間に、マリアンは数種の野菜を刻んで炒め、カレー粉やスキムミルクを混ぜ、米を炊いてカレーライスを作り上げていた。彼女はキャンプにいろいろな材料をバランスよく持ってきているようだった。「こんな荒野でよくこれほどの料理が作れるね」と感心すると「ピザでも作れるわよ」と言う。包み焼きの形にし、熾火の中で焼き上げるのだと言う。ラーメン、パスタとドライフルーツで乗り切ろうとしていた僕には衝撃的だった。

f0093462_11081952.jpg

またウルフはかまどの両脇にはY字の柱を二本立てて横に棒を渡し、レ字の型のフックを作って鍋を吊るす設備を作った。外国のキャンプの写真で見たことがあるが、実際にやっているのを見たのは初めてだ。そしてこれが料理を飛躍的に便利にしていた。

ちなみに2人は調理用のコンロを持ってきていなかった。たとえ雨でも焚き火を熾して調理するのだという。「どんな時でも火を起こす方法を知っているからね。」これはもしかすると、トラッカースクールで学んだことなのかもしれない。

ちなみにこの2人、彼氏と彼女ではないと言うことが分かった。一緒のテントだったからそうだと思い込んでいたが、お互い「ベストフレンドの一人」なのだと言う。ウルフはオーストリアに彼女がいて、この旅が終わるころにカナダに来るらしい。もう一度この川を降ろうかな、と言う。本当にユーコンが好きなんだな。

最後にウルフはバナナチョコレートをデザートに作ってくれた。皮がついたままのバナナに切れ目を入れ、チョコレートを挟んで焚き火の上へ。チョコが溶けたら出来上がり。ほんのすこしの工夫でなんと美味なことか!

f0093462_11091501.jpg

同じ荒野でも、知識と技術で楽しめるレベルがこれほどまでに変わってくるのか。2人とのキャンプでは目から鱗が落ちっぱなしだった。中盤の街カーマックスではいろいろな食材を買って料理してみよう、やれることはなんでも試してみようと思った。




[PR]
by n11t | 2016-11-15 07:00 | ユーコン川