【元川ガキ、ユーコンへ行く】野田さん、クマが怖いです。(3月)
2016年 10月 30日
出展:小学館ホームページ
「ユーコン川へ行こう」
と思いったはいいが、そこはどんなところなのか、僕はいまいち掴みきれずにいた。
確かに野田知佑さんの著作では川の様子が詳細に説明されている。
ただ僕はその文章から抱くイメージと現実が符合しているのか自信がなかった。
クマはどんな生き物か。
キャンプ地はどんな場所なのか。
ユーコンまでのアクセスは。
川の水量や流れの強さはどれくらいか。
まずはその雰囲気を知り、自分の力量とユーコンの現実を結びつけたいと思った。今、日本で簡単に見られるユーコンの貴重な映像資料は「水曜どうでしょう ユーコン川160キロ〜地獄の6日間〜」だけだ。(そしてこれはこの上なく面白くわかりやすい)
話は直接聞くに越したことはないと思い、3月中旬、僕は野田さん宅を訪れた。いつも通り犬のアレックスとハナがダッシュで出迎えてくれた。
まずは、何よりも心配なクマについて。野田さんとみどりさん曰く、最も一般的なルートであるホワイトホースからドーソンに至る区間ではクロクマが多い。上流部ほどその傾向が強いという。
グリズリー(みどりさんの言い方では「グリ」)は大型でクロクマより凶暴であり、気をつけなければならない。日本のクマで言えば、クロクマはツキノワグマの仲間、グリズリーはヒグマだ。
では、どのような対策をすればいいのか。
野田さんは、基本的な対策を守っていれば大丈夫という。
基本的なクマ対策とは、
・テントの中に食料を入れない
・食料はテントから離れた場所に置く
などといったことだ。
しかし、野田さんは今まで多くの旅で銃を携行していたではないか。そのことについて聞いてみた。
「テロ以降、外国人は銃を手に入れられなくなった。でもクマは臆病だから心配する必要はない」
続けて野田さんは「クロクマは犬より臆病」と言い、みどりさんは「前に一緒に行ってた人がトイレ中に出会ったらしいけど、スコップで顔を叩いたら逃げたみたい」と語った。最後に野田さんは「大丈夫だ」といい、僕は随分と気が楽になった。
その他にわかった主要な事柄は次の通り。
・ユーコン準州の州都ホワイトホースからゴールドラッシュの街ドーソンまで下る約2週間のコースが最も人気。
・そこには多くのパドラーがいる。毎晩国際交流のようなことができてとても楽しい。
・7月半ばからの1か月がハイシーズン。その頃には蚊も少なくなる。
・焼酎を持っていくといい。”Japanese Gin”と言って外国人に振る舞えば喜ばれる。
・ホワイトホースにはカヌーピープルという野田さんと親しいカヌーレンタルがある。ドーソンではカヌーを回収してくれる。
・詳細な川地図はカヌーピープルで売っている。
・ホワイトホースには大型のホームセンターやアウトドアショップなどがあり何でも手に入る。
訪問した際、野田さんは2014年にユーコン川を筏で下った際の旅行記の出版に向けて準備を進めていた。その本は1か月半後の5月、「ユーコン川を筏で下る」(小学館)と言うタイトルで発売された。
本では川旅の行程が詳細に記録されていた。キャンプ地や町の情報も豊富でユーコンの歴史などの逸話も多く、これまでに20数回ユーコンを旅している野田さんにしか書けない内容だと思った。その後、僕は何度も読み返し、準備だけでなくツーリング中にもガイドブックとして利用した。
唯一「ええ!」と思ったのはクマのこと。野田さんはあれほど「大丈夫だ」といっていたのに
「極北の川を行くときにクマ対策として銃を持っていくことに無関心な人がいる」(P66)
「佐藤(秀明さん)が言った。『僕の娘だったら絶対に一人ではユーコンにはやらないよ』」(P117)など脅し文句がオンパレードだった。
野田さん、聞いてないです!